ピロリ菌感染症と胃癌

●ピロリ菌感染症
感染者の割合は、60歳代で8割、40歳から50歳代は4割から5割、30歳代は3割ほど。
すべてのピロリ菌感染者に除菌を行うべきである。最近の研究によれば、なるべく若いうちの除菌の重要性がはっきりしてきている。若いほど除菌効果は高く、胃癌リスクを最大限に減らせる。一方、感染率が高いのは高齢者で、もちろん除菌する意義は大きい。60歳代では2分の1、70歳代でも3分の1くらいの胃癌発生を抑制できる。全年代で見ると、除菌で胃癌リスクを3分の1から2分か1くらい減らせる。
●ピロリ菌除菌
潰瘍の保険病名がないと除菌は自費になる。1次除菌で成功するとコストは約7000円であり、胃癌の検査・治療費よりよっぽど安い。日本ヘリコバクター学会が、自費除菌ができる施設のリスト「保険外除菌対応施設一覧」 を公開している。原則は感染者は全員除菌だが、保険が効かない現状では胃癌予防の意義や各種検査値の読み方などを説明し、理解していただいた上で患者本人の判断に任せる。
例外は一つあり、NSAIDを服用している患者に、活動性の胃潰瘍や十二指腸潰瘍が起こり、ピロリ菌に感染していることが分かっても、すぐに除菌をしてはいけない。この場合、潰瘍の原因はNSAIDとピロリ菌、いずれも疑われるが、先に除菌をしてしまうと潰瘍が治りにくいという知見がある。潰瘍の真犯人であるNSAIDの服用を止めればいいが、現実はなかなか止められない。こういう時は、まずプロトンポンプ阻害薬(PPI)で潰瘍を治癒させた後に除菌する。
●一次除菌
・ランサップ800 7日間
ランソプラゾール(タケプロンカプセル30) 1T 分2
アモキシシリン(アモリンカプセル250) 6T 分2
クラリスロマイシン(クラリス錠200) 4T 分2
・ランサップ400 7日間
ランソプラゾール(タケプロンカプセル30) 1T 分2
アモキシシリン(アモリンカプセル250) 6T 分2
クラリスロマイシン(クラリス錠200) 2T 分2
●二次除菌
・ランピオン 7日間
ランソプラゾール(タケプロンカプセル30) 1T 分2
アモキシシリン(アモリンカプセル250) 6T 分2
メトロニダゾール(フラジール250) 2T 分2
●三次除菌
PPI2倍量+アモキシシリン(サワシリンなど)1500mg+STFXシタフロキサチン(グレースビット)200mgの2分割1週間療法が除菌率が高く、70%。PPI4倍量+アモキシシリン(サワシリンなど)2000mgの4分割2週間療法が次に除菌率が高く、60%。PPI+AMPC+LVFX600mgの除菌率は40%。
STFXで副作用は下痢・軟便で約15%。整腸剤併用は下痢の予防効果が認めれる。
●小児での除菌
原則として5歳以上の胃・十二指腸潰瘍、貧血や腹痛を伴う慢性胃炎の症例などが除菌治療の適応とされている。除菌レジメは成人と同様に一次除菌はPPI+AMPC+CAMで、二次除菌はPPI+AMPC+MNZ。ただし、CAM耐性率が小児や若年者で比較的高く、PPI+AMPC+CAMが一次除菌として適当かどうかの議論がある。ランソプラゾール1.5mg/kg/日、オメプラゾール1.0mg/kg/日、アモキシシリン50mg/kg/日、クラリスロマイシン20mg/kg/日、メトロニダゾール10~20mg/kg/日。
●除菌の失敗
コンプライアンス不良は除菌失敗の原因になるため、耐性菌を作って治療に難渋することもあり得る。決められた量と期間を守ってきちんと抗菌薬を飲むことの意義をしっかり伝える。副作用として4人に1人が軽い下痢や軟便を起こす。驚いて服用を自己中断してしまわないよう、事前に知らせておく。下血や腹痛を伴ったり、下痢で生活に支障が出たりしなければ、1週間程度の服薬期間、辛抱してもらう。なお、薬疹の発症率は1%以下、入院の必要があるような出血性大腸炎は0.1%程度。
1次除菌で85%、2次除菌まで含めると98.5%の除菌率と言われている。ペニシリンアレルギーがある場合はアモキシシリンの代わりにメトロニダゾールを使うことが多い。
●除菌の判定
除菌判定では、検査するタイミングが肝。原則として、除菌終了から少なくとも1カ月は期間を空けてから判定する。また、PPIは菌量を抑制する働きがあり、偽陰性を引き起こす。PPI服用時からは2週間以上空けて判定すべき。
もう一つ大事なのは、複数の検査方法を組み合わせて判定すること。個々の検査にはそれぞれ弱点があり、例えば、迅速ウレアーゼ試験は、除菌後は感度がやや低くなるのが欠点。尿素呼気テストは、口腔内細菌の影響を受けたり、胃が萎縮している場合には胃内の他の菌の影響で偽陽性になったりする。また、ヘリコバクター・ピロリ抗体は陰性化するまで数年を要するので、除菌前の抗体価の半分以下に減っていれば除菌成功とみなしている。1つの検査だけで判断するのは心許ないので、複数の検査を行い、いずれも陰性であれば「除菌成功」とみなす。
●除菌後の胃癌
除菌成功しても胃癌発生が抑制できるのは、60歳代で2分の1、70歳代では3分の1くらい。若いうちの除菌で抑制率が高い。除菌しても未感染の状態と同等までに回復させることは難しい。事実は、ピロリ菌感染者の10%ほどが胃癌を発症する、除菌をすれば胃癌発症を3分の1に減らすことができる。
除菌しても胃癌になる可能性があるため、1年から2年ごとに内視鏡検査でフォローする。除菌で安心してしまって、その後は何の検査も受けないのでは不十分。特に繰り返す潰瘍の場合、除菌後もきちんと検査を受けるべき。
除菌後に発症する胃癌に関してまだ分からないことが多いが、最近の報告では小さくて見つけにくい陥凹型を示すことが多いのが特徴。
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